前世の物語
そなたは一匹の狐として、江原道の山あいの村の近くに生まれた。そなたの母は賢い雌狐であり、そなたら兄弟は五匹であった。幼き日のそなたは兄弟の中でも最も賢かった。母が教える前にすでに多くのことを自ら見抜いた。 二ヶ月になった頃、そなたは初めて巣穴の外へ出た。そなたの兄弟たちが珍しきものを見て驚き逃げる時、そなたはしばらくそれを観察した。それが危険か安全かをまず見極めること、それがそなたの本能であった。母がそれを見て言った。「お前は違う道を行くであろう」と。 六ヶ月になった頃、兄弟たちが巣穴を離れた。そなたも離れた。しかしそなたは遠くへ行かなかった。そなたは村の近くに居を定めた。他の狐は村を恐れたが、そなたはそうでなかった。村には鶏がおり、小さな食物があった。そなたはそれらを賢く奪い取った。 一歳になった年、そなたは初めて猟師に追われた。彼はそなたを捕らえて毛皮を得ようとした。しかしそなたは彼より速く、何よりも賢かった。そなたは彼を二つの山を越えさせて別の村へと誘い込み、そこでそなたは消えた。猟師は自らがどこにいるのかさえ分からぬまま道に迷った。 二歳になった年、そなたは一人の巫女に出会った。巫女はそなたを見てしばし沈黙し、礼をした。「そなたは霊獣である。人にはなれずとも、人より賢き獣である」と。その日以来、巫女は時折山中でそなたに食物を置いて行った。そなたはそれを食べ、巫女はそれに満足した。 三歳になった年、そなたは伴侶に出会った。同じ山の別の狐であった。二人は一つの巣で暮らし、子を三匹儲けた。しかしそなたは他の母狐とは違った。そなたは子らに先ず賢さを教えた。狩る術よりも、危険を避ける術を。それがそなたの教えであった。 五歳になった年、大きな狩りがあった。村人らが集まり山を取り囲んだ。虎も熊も捕らえられた。しかしそなたは捕らえられなかった。そなたは猟師たちの罠の間をすり抜け、彼らの眼を逃れて山を越えた。一人の猟師がそなたの足跡を見て言った。「この狐は人より賢い」と。 八歳になった年、そなたは一人の両班(ヤンバン)の子息に出会った。その子は山で道に迷っていた。そなたはその子をしばらく追いかけた。子が恐れて泣くのを見て、そなたはその子の前で静かに村の方角を指し示し進んだ。子はそなたを追って村に着いた。後にその子の家ではそなたを山神と呼び、毎年祭祀を執り行った。 十歳になった年、そなたの伴侶が去った。老いであった。そなたもまた老い始めた。しかしそなたは依然として賢かった。老いた狐はさらに賢いと言われていた。それは真実であった。 十三歳になったある春、そなたは自らの死を予感した。そなたは巣を整え、子らの子らに一度ずつ会った。そして山の最も深きところへ行った。人も他の獣も届かぬ場所。そこでそなたは静かに去った。誰もそなたの亡骸を見つけなかった。 村人らはそなたが消えたことを知ってしばらく疑問を抱いた。ある者はそなたが道を悟って人になったと言った。ある者はそなたが山神になったと言った。真実は誰も知らなかった。 智者は足跡を残さぬ ― それがそなたの生涯であった。そなたの魂は今もどこかの山中で、賢き一匹の狐として生きているであろう。




